住宅市場に慎重姿勢広がる 日米販売動向とインフレから考える投資の視点

Monthly Report

Photo:東京都庭園美術館(日本の重要文化財・旧朝香宮邸)の大食堂。フランスの装飾美術家アンリ・ラパンの壁画と、フランスのガラス工芸家ルネ・ラリックのパイナップルとざくろをモチーフにした艶消しガラス照明が彩るアール・デコの美空間。| 2025年7月23日 PM 12:38 | 気温32℃

不透明感の中で問われる“本質的な判断軸”

2025年6月に発表された米国商務省および不動産経済研究所の住宅市場データは、いずれも新規販売の減速を示しています。

高止まりする金利、持続的なインフレ圧力、そして政策的不確実性といった要因が、日米ともに住宅需要に慎重姿勢をもたらしており、不動産市場全体に警戒感が広がっています。

住宅市場は、消費者心理や景気の転換点を映し出す「先行指標」です。こうした局面では、投資家にとって「何を・なぜ・いつ投資するか」という戦略的で構造的な視点が、これまで以上に重要になります。

米国市場:高金利と政策不透明感が重しに

2025年6月、米国の新築住宅販売件数は62.7万件と、市場予想(65万件)を下回りました。住宅ローン金利は依然として7%台にあり、特に初回購入層の購買意欲に冷水を浴びせる結果となっています。

さらに、建築資材費や労働コストの高止まりが住宅価格を押し上げ、実需とのギャップが拡大。FRBによる利下げ時期の見通しが不透明な中、市場全体に“静観モード”が漂い始めています。

日本市場:“価格上昇”と“購買手控え”が交錯する“ねじれ”の構造

日本でも同様に慎重姿勢が表面化しています。2025年6月の首都圏新築分譲マンション発売戸数は1,641戸(前年比-1.3%)とわずかに減少。一方で、平均価格は前年比+11.8%の9,165万円と過去最高水準を記録しました。

注目すべきは、初月契約率が61.0%と2カ月連続で好不調の分岐点とされる70%を下回った点です。これは、価格上昇に対して実需が追いつかず、購入を見送る動きが広がっていることを示しています。

金融政策が徐々に引き締め方向へと転換する中、「高値掴み」への警戒が強まっていると言えるでしょう。

東京のインフレ指標:一時的な鈍化か、それとも転換点か

2025年7月、総務省統計局が公表した「消費者物価指数(CPI)」によると、東京都区部のコアCPI(生鮮食品除く総合)は前年比+2.9%となり、前月(+3.1%)および市場予想(+3.0%)を下回る結果となりました。

日銀が注目する「基調的インフレ率(消費者物価指数CPIのうち、生鮮食品とエネルギーを除いた指数)」も+3.0%に低下し、物価上昇のペースには一服感が見られます。

しかし、為替動向、原材料価格、地政学リスク、賃金の先行きなどを考慮すれば、今後のインフレ動向は不透明感が残ります。市場では「年内の追加利上げ」についても見方が分かれており、こうした不確実性が不動産投資の意思決定にも影響を及ぼしています。

不確実性の時代に問われる、「見極め」と「長期視野」

今のような不透明な市場環境では、以下の視点が不動産投資の成果を左右します。

1. 物件を見抜く「選別力」
・立地の将来性
再開発エリアや新路線開業予定地など、中長期的に価値が高まる地域を選定
・需給バランスの健全性
空室率、人口動態、地域経済の変化から過剰供給リスクを見極める
・用途との整合性
単身者向け・ファミリー層向け・観光特化型など、ニーズに合った物件かどうか

「今買える」ではなく「将来に耐えられる」か。短期的な価格や利回りだけでなく、将来の価値と実需を見抜く“知的な目利き”が求められます。

2. 社会変化に対応する「長期性」
共働き世帯向けの設計(在宅ワーク対応・保育施設の近接)
郊外型住宅の再評価(リモートワーク普及を前提)
インバウンド需要を意識した観光・宿泊特化物件
高齢化に対応したケア住宅・医療連携型マンション

「社会やライフスタイルの変化に適応できるか」が、資産価値の持続性を左右します。

変化に強い“知的投資”を

不動産市場は常に変化し続けています。今のような不透明な時期こそ、冷静な情報収集と判断軸の明確化が差を生みます。

私たちは、住宅市場や経済動向をリアルタイムで分析し、お客様の資産形成・事業戦略に確信を持てる情報と戦略的提案をお届けしています。

これからの時代は、「情報をどう使うか」「どう判断するか」が投資の成果を分けます。変化を読み解く力と、未来を見通す知性が、次の投資チャンスをつかむ原動力となるのです。

今後も私たちは、皆さまの意思決定を支えるパートナーとして、市場動向や投資のヒントをわかりやすくお届けしてまいります。